2010年11月20日土曜日

心理の専門性ってなんぞや。という話をしたあとに考えたこと。

ツイッターでここ2,3日、心理の専門性ってなんぞや、みたいな話が
一部で盛り上がっておりました。

色々、心理士資格や心理職や心理学(このへんは混同しちゃならん)の抱える問題ってのは
あるわけで。とかく日本文化では、これらの「心理」一連のものが生き残れるのかどうか
私は結構あやしいよなあと、心理を目指した頃から思っていて
正直、まあよくここまで認知度あがったもんだ。でも、どう考えても一時的なものでしょ、
という気持ちは、ずーーーーっと持ち続けている。

そういう、冷ややかな(冷静、という意味ではない)視線を
”日本における「心理」”全般にふりそそぎながらも
私は、心理学部卒で、臨床心理士で、心理職で、心理司なわけです。

だから、こういう議論があったら、喜んで乗る。考える。
これだけ危ういもので今、飯をくっている立場として
「心理なんて、いっときのブームよ」とだけ言っているわけにはいかぬのだ。

で、この議論の中で、ひとつ、「ああああ、ごめんなさい」と気がついたのは
心理が日本で生き残るための、社会へのアクションを起こす、ということを
私はまーーーーったく、やろうとしなかった。思いつきもしなかった。
誰かがやると思ってた。

でも、これは、現職の人間はすべからくその責任を負っているのだということを
この議論の中で気づかされた。

もし、それをしないのならば、心理職であることを辞めなくてはいかんと
そう思う。それが、曲りなりにも専門職という立場をかざして仕事している人間の
責任なんだと思う。


***

でも、私はいずれ、心理職であることはやめる方向にいくと思う。
学部を卒業したあとに、一般企業に就職した、その時の気持ちは
やっぱり私の根っこにずっとある。
心理の知識を使いながら、心理職じゃない形で、対人支援はできるはず。
という理想。

そしてその方法こそが、より多くの人へのアクセスを可能にする、あるいは
より多くの人からのアクセスを簡単にする、と思ってる。

私が最初に就職したのは住宅メーカーだったけど(そして内定後に
子会社の不動産賃貸会社に出向が決まったわけだが・・・orz)

それは、人がより多くの時間を過ごす住宅空間には
その家族や構成員の生活導線、ひいては、生きる価値観につながる何かが
かならず組み込まれていると思ったからで、
そしてそれをいかに設計するかによって、その人の生きやすさは絶対かわる、
カウンセリングなんかより、ずっとダイナミックに変わる。という信念があったから。

例えばそういう形で、当たり前に人が生活しているところにあって
普段あんまり重要視されていないようなものの中にこそ
鍵がある、ということを、いつも思ってる。

障害のある子どもさんを抱える親の、心理ストレスを解消するために
カウンセリングでも別にいーんだけど、

それよりは療育でスキルを身につけてストレスを減らすとか
そもそも気軽に外出とか旅行とか出来る店とか場所があるだけでも
全然違うでしょうに、とか
そういう、ダイレクトな支援、っていうのも、目指している方向のひとつかもしれない。

で、今は療育に近い(実際の療育が出来る環境にないので、療育的助言しかできてない)
ところを自分の仕事に組み込んでいるけど、
それもやっぱり「相談」っていう形でとてもかしこまったものになっちゃうのが嫌で
こりゃもう、気軽にいける店とかペンションとか、作っちゃうしかないべ、みたいな
そういう妄想でわくわくしている。

施設で生活する子の思春期の不安や行動化にも、今は助言やセラピーをしてるけど
この子たちが18歳になって、急に所在できる場所がなくなる、その不安をなくさない限り
助言もセラピーも意味なし!ということも思っている。

だから、就労先を作るなり開拓するなりして、賃貸で住める環境を作って
そこでは生活のヘルプもいれながら、自立の最初のステージをきちんと
整えていけるようなところを、作りたいなあとか。ね。

それは施設退所児童だけじゃなくて、多分、長い不登校で社会適応が困難な子とかも
受け入れていけるものに、育っていけるかもしれないし。

私がアプローチしたいのは、生きる居場所なんだよね。
もう本当にそれは、ぜーったい揺るがない。

心理職である今は、その「生きる居場所」を、
その人自身が作っていくののお手伝いをさせてもらってる。
今ある環境をどう受け止めるかによって、「生きにくい場所」を
「生きる居場所」に変えていく。

やり方はとってももどかしいけど、
どういう時間の使い方をするか、どういう行動をするか、を助言して
そこからダイナミクスを変えていくような。そういう感じ。
例えば、子どもを保育園に預けるだけでも全然違うでしょ。
個室を与えるだけでも変わるでしょ。
習い事して、外に出る時間を作ると生活かわるでしょ。

生活がかわると、気持ちがかわるでしょ。

そういうこと。そういうのを、すーっごい丁寧に検討して
現実的に出来ることを、ひとつひとつやっていく。

そのやり方がもっともっと自分の中でうまくなっていくまでは
今の仕事は辞めたくないと思うなあ。

***

ま、雑感。